東京高等裁判所 昭和36年(ネ)2652号 判決
先づ本件控訴の適否を審査する。「村」が訴訟の当事者で、訴訟代理人のないときは、その村長の資格喪失は訴訟手続の中断事由になるものと解すべきであるが、この場合でも村長若しくは村長職務代理者より受訴裁判所を介し相手方に資格喪失の事実を通知するか、或は相手方の出頭している期日においてその旨を申出なければ、その訴訟関係においては村長の資格喪失の効果を生じないものと解するのが相当である。本件において控訴人は前村長塚田武雄が昭和三十六年三月十三日限り(原判決言渡の二日前)辞職により村長の資格を喪失したと言うけれども、村長職務代理者であつた助役中沢槌武が右の事実を被控訴人に通知した事実を認めるに足りる証拠がなく、却つて当審証人中沢槌武の証言によると、同人は前村長塚田武雄の辞職後昭和三十六年六月五日上野村助役を辞任する迄右の通知をしなかつたことが窺われるし、又裁判所に対し資格喪失の事実を通知しなかつたことは控訴人の自認するところであり、事実通知のあつたことを認むべき資料は全くない。してみると控訴人の前村長塚田武雄が昭和三十六年三月十三日限りその資格を喪失しても、本件訴訟においては依然同人を被告(控訴人)の代表者として取扱うほかはないから(本訴第一審において控訴人の訴訟代理人は選任されていなかつたにかかわらず)訴訟手続は中断しなかつたものと言わねばならない。而して原判決が昭和三十六年三月十五日に言渡され、その判決正本が同年四月一日塚田武雄の自宅(上野村新羽)で同人が不在のため事理を弁識する同人の妻政代に交付されたことは、本件記録により明らかである。そして「村」が当事者の場合(通例は村役場において送達されるであろうが、必しもこれに限るものではなく)送達を受くべき者は代表者たる村長であるから、本訴訟上当時なお代表者として取扱われる塚田武雄に対する右の送達は民事訴訟法第一六九条第一項第一七一条第一項の趣旨に鑑み適法であると言わねばならない。
されば控訴人については控訴期間は判決正本送達の日の翌日たる昭和三十六年四月二日より起算して二週間後の同月十五日迄であるところ、本件控訴状が昭和三十六年十一月十六日原審に提出されたことは、これに押捺されている日附印により明らかであるから、本件控訴は不適法としてこれを却下するほかはない。
(梶村 室伏 安岡)